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事例紹介

働き方改革をオフィスから/株式会社ミツキ

オフィス環境の改善から「働き方改革」を成功させた企業がある。成功の秘訣はどこにあるのか?

生産性の向上を旗印に、人手不足解消と労働時間の改正に取り組む「働き方改革」。実はこの問題、大手企業よりも中小企業の方が深刻だ。
予算やリソースの問題で改革を進めたくても進められない企業側に対し、より多くの条件と自由を期待し、求め始めた社員たち・・・。
社員の意見を聞き始めたらその溝の深さに蓋をせざるを得ない企業や、あえて蜂の巣をつつかない様に静観する改革に消極的な企業も多い中、
オフィスの移転を機に新たな業務体制や理想とする社員の関わりに併せオフィスを改善し、みごと働き方改革を成功に導いた企業もある。
本当に変えたのは何だったのか? 移転にかかる費用の算出の方法は? そのアプローチと真の改革に迫る。

// 「働き方改革」―それはこれからの働き方に併せて、制度や関わり、そしてオフィス環境までを徹底的に改善させること //

「働き方改革」 —  既に「国策」となって久しいこの取り組み。
経営者が社員の働き方をどう変えようかと試行錯誤しているここ数年の間に、
改革の向かう先は既に「労働時間削減による生産性の向上」という視点だけではなく、
社員が「働く時間や場所に縛られず自由に働くための権利」に変化しつつあり、
さらに言えば「理想とするライフスタイルを維持するための選択肢への対応」を求められ始めている。

実際対応が遅れている企業は、時に「ブラック」という悪しきレッテルを貼られ、
SNSの掲示板など経営者の見えないところで後ろ指を指されている。
もはや「自由度のない会社に魅力なし」と見なされた企業は、
次第に人手不足や採用困難という状況に直面し、
その末路は労務倒産という言葉さえあるぐらい深刻な状況だ。
これは大企業よりも、むしろ中小企業の方が深刻な問題であろう。

一方で着実に理想とする「働き方改革」を行い、会社を成長させている企業もある。
今回我々が移転の支援をさせて頂いた、株式会社ミツキもそんな会社の1つだ。
彼らはオフィス移転を機に、社員が働きやすいと感じられる働き方とそのオフィスを実現した。
もう少し正確に言うと、これからの理想の働き方に併せ、会社の制度や社員同士の関わり方を見直し、
これが実行しやすいオフィス環境へと正すことで、社員の意識を高めることに成功したのだ。

移転の陣頭指揮を執った常務取締役の岩切氏に今回の取組について話を聞いた。
「オフィス移転は1つのきっかけにしか過ぎません」という岩切氏。
「本当の働き方改革は、経営者、上司の改革である」というその言葉には、
私たちが推進する《ヒトコトバ》とも重なる。

会社の成功には、言うまでもなく、経営者も含め全社員の成長が必須である。
「社内ルールと場が変わることで、下の意識が変わっていきます。」という岩切氏。

― 成功のポイントはどこにあったのだろうか?

ミツキ 岩切 秀樹

株式会社ミツキ 常務取締役 岩切氏

// 成功のカギは、まず自分の会社の強みを知ること //

― まずは、御社の事業内容を教えてください。

主に100円均一の雑貨を卸売りしています。
元々は前身の会社があり、頭飾品(ヘアゴム、カチューシャ、シュシュなど)からスタートしました。
ミツキ自体はまだ3年足らずの会社ですが、
前身の会社は45年ほど続いた100円均一業界でも一番と言っていいほど古い会社です。
どこよりも先んじて国内の大手100円均一店舗に商品供給することで先行メリットを持っていたため、
ヘアゴム、旅行用詰め替えボトル、鏡などの超定番カテゴリーを抑えているのが強みとなっています。

― ミツキになり、成長している要因は何でしょうか。

昔からある商品の売り上げが安定していたため、財産であった定番商品を強みとして活かしました。
当時は珍しさもあり、海外から仕入れて販売すれば売れる時代だったのですが、
時代が変化していく中で同業他社の参入があり、自社の創意工夫が必要とされるようになりました。
アイテム数も多数あった中で、まだ売れるものだけに絞り、パッケージのリニューアルを始めました。
併せて今風の流行りを押さえたカラーチェンジ、素材チェンジを施しました。
さらに、店舗視察でアソートの色残りを確認し、
アソート割合を変更するなどして売り上げを伸ばしてきました。

ミツキ オフィスデザイン ロゴサイン

// オフィス移転は、これまでの働き方を見直し、改善するチャンス //

― オフィスを移転されるに際し、どんな目的があったのでしょうか?

もともとは定期借家であったため、今回は移転せざる負えなくなったという背景がありました。
しかしこれを機に取り組んできた試みとこれからの働き方を考え、
それらと現状オフィスとの差異を極力なくそうと考えました。

― オフィス移転を「引越し」以上に捉えてのスタートですね。
  オフィスのコンセプトを立案してもらうにあたり、
  我々デザイン事務所へのオーダーについて教えてください。

我々が取り扱う100円均一の商品はほとんど家で使う物のため、
オフィスにいても商品開発をしやすい環境にして欲しいというオーダーをしました。
常に家を意識できるような感じという想いが最初から両者にあって、
そうしてワイズ・ラボの代表にご提案頂いたのが、オフィスの中に執務する「デスク空間」と
自宅のような「リビング空間」を分けた『みんなの家』というものでした。
オフィスの中に日常の自宅をイメージ出来るような空間を配置することで、
常に開発者が商品とのリアルなイメージ共有が出来るようにと、
キッチンの他に、玄関、リビング、ダイニングに見立てたスペースがあります。

― コンセプトが出来た後、計画に先立ち何か悩みはありましたか?

まず、オフィス移転にあたりどのぐらいの規模が必要か。
本当に必要な面積を割り出すのにとても苦労しました。
前身の会社では、各店舗様に自社内で発送作業を行うため、物流倉庫を抱え、
パート社員も70名程いたため、オフィスはすごく広かったのです。
しかしミツキになって、業界では革新的な試みとして物流を外注に切り替えることで、
社員の10名程で業務が行えるようにしたのにもかかわらず、
オフィス自体はそのままの広々とした空間を使用していたため、
至る所に自由に物を置くことができ、色々な物が散らかっている状態でした。

また社員同士の関わり方を変えるにあたってどんな会議室が必要か、会議室のあり方自体を見直しました。
これまで1つしかなかった囲われた会議室には、応接セットのようなソファーセットしかなかったため、
用途にそぐわずほとんど使われていませんでした。
会議するにしても、ソファーにもたれかかるように座った状態で資料を広げれば、
必然的にお互いの顔が見えない状態となるため、とても議論が進む状態ではなかったのです。
議論できる場もなく、業務に必要なコミュニケーションを取れる場がほとんどなかった状態のオフィスでは、
細かい打合せも情報共有も難しく状態でした。

― それらはどうやって解決出来ましたか?

まず必要面積を割り出すためには、自ら社内の片付けを行い、倉庫を集約するなどしていきました。
社員は昔の名残もあり片づけるのは意識的に難しかったため、ここでは自ら動いて地道に作業を行いました。
移転後は、物理的に倉庫とオフィスを別にすることで整理し、
片付けなどの意識付けは、ルールを設け日頃から徹底するようにして解決しました。

会議室においては、既存のソファーセットがある中で勿体なくはありましたが、
どうしたら状況に応じた会議の場を生み出せるのかを議論した結果、
きちんとした会議テーブルセットを購入することにしました。

― ソファータイプだから会議が出来ないと考えたわけですね。
  一見なんでもないように思われがちですが、会議のスタイルや頻度は変わりましたか?

きちんと座って、皆で同じ机で資料を共有し、向かい合い話し合う、というスタイルが我々には必要でした。
その後は会議が増え、社内の不満を問うアンケートでは、
今度は「会議室が足りない」という意見が殺到したんです。
今まで必要とされていなかった会議室が、テーブルというセッティングを変えたことにより、
自然と場所が必要と感じるように変化していきました。
今では様々なミーティングが社内の至るところで頻繁に行われています。
これが引き金となり社内での取り組みも相乗効果を生み、
情報共有メールも頻繁に入るようになり、明らかにコミュニケーションが変わりました。

― 業務のスタイルや状況に応じて、会議室1つとってもそのあり方が異なるということですね。
  その他こだわったことはありましたか?

他部門の人とのコミュニケーションも大事にというのは頭にあったため、
元々ホットコーナー(珈琲コーナー)はありました。
今度もそのような空間をつくりたいと思いましたし、
その他様々な会議や打ち合わせの際に、会話だけでなく自社の商品やツールを使って
コミュニケーション出来るようにフレキシビリティを持たせて欲しいということにはこだわりました。

― これからの様々なスタイルの会議や打ち合わせに柔軟に対応出来るようしたのが、まさにリビングスペースですね。
  そうして完成したオフィスの評判はいかがでしょうか?

営業担当の者たちは私の部署でもあったので、
事前に話してきた考え方にも慣れていたため、すぐに馴染めていました。
一瞬あった不満もその良さをすぐに理解してくれて解決したので、今は有効に活用してくれています。
一方、業務担当の者たちは、当初接点が薄かったこともあり、最初は戸惑っているようでした。
しかし、2か月くらい経つと色々な場所を自分たちなりに考えて使いはじめ、中国とテレビ会議をしたり、
用途に合わせ様々な場所を選びながら、ミーティングをしたりするようになってきました。
全員ではないですが、両部署合わせてのミーティングが増えて、とても良い傾向です!

― 事前にどういう使い方をするのかという意識共有も、大切だということですね。
  来客の評判はどうですか?

来る人はみんなびっくりしています。「こんなオフィスで働きたい」と高評価です。
空間の意味を説明すると、「そういう空間いいですよね」と頷いてくれます。
※ミツキ様移転後の様子・空間の意味についてはコチラ

― その他、移転する際にやってみて良かったことありますか?

ガラス製のホワイトボードや、iPhoneやiPad繋ぐとモニターに映せるケーブルがあるのですが、
まだあまり使われていません。
声掛けをして、だんだん使われるようになってきましたが、
自分たちでもっと考えて、より有効に使ってもらえると良いなと思います。
商品用のストック兼飾り棚は、顧客に合わせて、
表現方法を変えるなど工夫をするようになったので、どんどん進化しています。

― 打ち合わせスタイルも状況が変われば「書く・映す・見る」など様々に進化しますね。
  残念ながら残してしまった課題はありますか?

目先の課題ではないですが、もし今後増員をするとなると、今のレイアウトでは厳しくなってきそうです。
その時に、このリビング空間の機能性を確保しながら、
さらに良いオフィスに作り替えることができるのか懸念点としてあります。
柱の位置や役員席の数から考えると、執務空間は硬直性が高いレイアウトと考えます。

ミツキ オフィスデザイン 『リビング』をイメージしたオフィス空間 

エンドユーザ―の環境を常にイメージ出来るように「みんなの家」をコンセプトにした

ミツキ オフィスデザイン 『玄関』をイメージした人を迎える温かいエントランス

エントランスは会社の雰囲気をダイレクトに表現する「みんなの玄関」

ミツキ オフィスデザイン 『ダイニング』をイメージした皆が集まる会議室

会議室は「話す」だけはなく、「映す」「書く」を実現した「みんなの部屋」

ミツキ オフィスデザイン 『キッチン』をイメージしたリフレッシュ&コピーエリア

偶発的なコミュニケーションを起こす「みんなのキッチン」

ミツキ オフィスデザイン 『洗面室』をイメージしたテスターエリア

バックヤードは洗面所などを表現した。これもエンドユーザ―の環境がをイメージ出来るように。

// 働き方改革は経営者の改革 //

― さて、オフィスが理想のカタチに変わり、目に見えて何が変わったでしょうか? 

オフィスとしては、家族が遊びに来られるオフィスにしたい、というのが社長の元々の想いでした。
産休中の社員もいるので、今後子ども連れて仕事もできる、そういうことが実現すると良いと思っています。
私自身も社長がいる時に既に3人の子供を連れてきたりしています。

目に見えて変わったことは、移転してから社長と社員との距離感が、業務上遠い人も近くなりました。
今までは、業務上近くにいて、ある程度人となりを知っている人しかカバーすることができなかったので、
理想の状態です。

― 環境を変えることに併せ、関わり方自体も変える取り組みを同時に行うこと。
  ここに重要な意味がありそうですね。

数字が伸びているのは結果であって、働き方が変わったから業績が伸びたと思います。
経営陣はその流れを作るのが仕事。
みんなとてもまじめなので、流れを作ってしまえばあとはみんなが頑張ってくれるんです。

― 働き方改革の効果を疑う経営者も多いように思いますが?

生産性を変えるということに対してもっと真剣に考えるべきだと思います。
「新しくてキレイ」だけでは持続性がないので、コンセプトがしっかりしていることが大事です。
さらに、そのコンセプトを社員に落とし込むよう日頃マネジメントをしていくことも重要です。
仕掛ける側(経営者)が理解していないと意味がないですから。
マネジメントの本質であり、ソフトとハードの両方が必要です。
移転前は制度があっても場がありませんでした。

― しかし、予算が限られていると「とにかく安い方」となってしまいそうですよね。

働き方改革において、制度に見合った場を作ることは重要だと考えていたので、
ここに妥協はありませんでした。
ワイズ・ラボもコンセプト作りから、一切のブレがなくその後の設計・デザインの提案をしてくれます。

ですから、資金コントロールについては工夫をしました。
オフィス移転は経営に絡むので、経営者の感覚は大事です。お金がかかるから損益に関わります。
会社の決算は財務上の処理が違うので、キャッシュフローと損益のルールをきちんと理解し、
そこを説明できるともっとアプローチはしやすくなるのではないでしょうか。

『良い会社をつくりたい』という社長の想いを受けて、そのための『良いオフィスをつくりたい』という、
岩切様の想いがカタチになった移転プロジェクト。
良いオフィスづくりは、いかに自分たちの働き方を理解してカタチに置き換えることが重要であるか。
そして出来たオフィスを制度や仕組みを活かし、
社員同士の関わり方をマネジメントしていくことで、意識も変えていくことが出来る。
バをつくることで、新しいコトを生みだし、結果ヒトの意識や成果まで変えていく。
《ヒト→コト→バ》が《バ→コト→ヒト》という逆でも成り立つことが分かりました。

私たちも今回のプロジェクトを通じ、
「より良い会社をつくっていく為の本気のマネジメント」を目の当たりにすることが出来ました。
この度は貴重なお時間を頂戴し、誠に有難うございました。【ワイズ・ラボ】

ミツキ オフィスデザイン 毎月、遊びに来た社員の子供たちに、季節をテーマに絵を描いて貰っている。

毎月、遊びに来た社員の子供たちに、季節をテーマに絵を描いて貰っている。

ミツキ オフィスデザイン 販売する商品を実際の店舗のディスプレーを想定して設置し、開発に役立てている

販売する商品を実際の店舗のディスプレーを想定して設置し、開発に役立てている

岩切 秀樹(いわきり ひでき)様 プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、大和銀行(現りそな銀行)に就職。銀行という看板のないところで自分を試したいと一念発起し、40歳を目前に退職。その後は、保険代理店を経て、経営コンサルを主体として活躍する。そんな折、コンサル先の1社が上場準備にあたり管理担当役員として常勤との要望があり、オフィス内装会社へ就職。諸事情により上場を断念することになり退職。リフレッシュ期間を経て東京の投資銀行に転身したが、親の介護により止む無く帰阪。その際、現(株)ミツキ代表取締役の中村氏より、ミツキ創業に当たり管理担当役員として誘いがあり現在に至る。現状は管理に加えて、営業・企画も管掌する。
どんな業界でも仕事の厳しさ、やりがいはある。内装会社へ就職した際に、ワイズ・ラボのコアメンバーである皆さんと出会い、オフィス構築による様々な可能性について薫陶を受けた。一度は無気力になり、就職活動もせず、読書、家庭菜園、ドライブに明け暮れる時期もあったが、仕事に邁進する日々の葛藤や、自身のライフスタイルを見直す時期など、働き方のスタイルの変遷と感情が、現在の社員と共に会社を作る経営に生かされていると感じている。

企業情報

商号
代表者
資本金
設立
事業内容
URL
問い合わせ電話番号
問い合わせメールアドレス

株式会社ミツキ
代表取締役 中村 喜吉治
800万円
2016年8月
日用品雑貨卸業
http://www.mitsuki-ltd.jp/
072-247-7626
web-info@mitsuki-ltd.jp